「アルバイト」、「パート」には、有給休暇なんて存在しないと思い込んでませんか?

「フリーターの身で有給休暇なんてあるわけないでしょ!そんなこと考えたこともない!」

・・・否!

労働法上、パートにも有給休暇は発生しますし、有給休暇を取る権利もあるんです。

知らないことで損をするのはもったいない!

有給休暇の仕組み(法律)を知って武装しましょう(笑)




KIRO-岐路-

年次有給休暇の仕組みを理解せずに無駄にする?


KIRO選択ポイント

  • パートタイム労働者(アルバイト、フリーター含む)である。
  • 働き始めて6ヵ月以上が経過している。
  • 決められた出勤日数の8割以上ちゃんと出勤している。


選択

年次有給休暇取得の権利を主張しよう!


1.「アルバイト」や「フリーター」の位置づけ=「パートタイム労働者」

「アルバイトとフリーターの違いって?」

「パートとアルバイトの違いって?」

考え始めると混乱するかもしれませんが、ポイントは一つだけです。

「パート」、「アルバイト」、「フリーター」は表現上の問題だけで、法律上の違いは一切ありません。

法律上、すべて「パートタイム労働者」となります。

以下、アルバイト、フリーターも含めて「パート」と総称します。


2.パートの有給休暇の実情

私自身もアルバイト経験はありますが、確かに有給休暇を取ったことはありませんし、そんな説明も一切ありませんでした。

そうです、「説明がない」から知らないだけなんです。

なんなら、バイト先の責任者すら法律を把握しておらず、知らないかもしれません。

もしくは、責任者は法律を知っているにも関わらず、人件費が上がるのを避ける為に伝えないのかもしれません。

その結果、パートタイム労働者にも有給休暇は毎年発生しているにも関わらず、使うことなく毎年消滅しているのです。

CHECK:実際に・・・

有給休暇を取得しているパートの方は多くいらっしゃいます。
自分が存在を知らないからと言って、そのようなものが都市伝説かのように扱うのはもったいないことです。


3.年次有給休暇とは?

(1)法律上の定義

年次有給休暇とは、「休んだにも関わらず出勤したことと同じ扱いとなり、給料が満額発生する休暇」です。

労働基準法で、以下のように定められており、パートタイム労働者にも有給休暇を与えなければいけないことが法律上で明記されています。

「業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません」(労働基準法第39条)


(2)年次有給休暇を付与される条件

有休休暇が付与される条件は以下の通りです。

● 働き始めてから6カ月以上が経過していること
● 決められた出勤日数の8割以上出勤していること

「”決められた出勤日数の8割以上”ってなんだ?」っていう話しかもしれませんが、シフトで決められた日を欠勤せずにちゃんと出勤した日数が8割以上あるということです。

CHECK:出勤率計算の留意点

・業務上の怪我や病気で休んでいる期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間などは、出勤したものとみなして取り扱う必要があります。
・会社都合の休業期間などは、原則として、全労働日から除外する必要があります。




4.年次有給休暇の付与日数

(1)有給休暇付与日数早見表

①フルタイムの場合(パートでもフルタイムと同等の労働をしている場合は含む)

● 週に30時間以上勤務している
● または、1日4時間以上の勤務で週5日または年217日以上勤務している

上記の場合は、パートでもフルタイムと同じ扱いとなり、以下の日数を有給休暇として与えることが義務づけられています。


②パートの場合

● 週所定労働日数が4日以下である
● かつ、週所定労働時間が30時間未満である

上記の場合は、所定労働日数に応じて、以下の日数を有給休暇として与えることが義務づけられています。


(2)「所定労働時間」ってなに?

ここで疑問が浮かびます。

「シフト制だから週の労働日数なんて不定期なんだけど、どうやって考えればいいの?」


①雇用契約書や労働条件通知書を確認する

採用時に、「労働契約書」や「労働条件通知書」が交付されているかと思います。

特に、労働条件通知書に至っては、労働基準法第15条に基づき、交付することが義務となっています。(もしもらっていなければ違法)

労働条件通知書に週の所定労働時間(始業・終業時間)の記載があるかを確認しましょう。


②勤務実績から算出する

所定労働時間が曖昧な場合など、明確に判断できない場合、

直近の勤務実績から所定労働時間を算出します。

例えば、働き始めて半年が経過した時点で有給休暇が付与されますが、その時点(直近半年)の勤務日数が 50日 だった場合、「1年間の所定労働日数」は 50 × 2 = 100日 と言えます。

⇒「(1)有給休暇取得日数早見表」の②より、3日間の有給休暇が付与されることがわかります。


5.有給休暇を取得時の給料

では、いざ有給休暇を取得したとして、1日あたりいくらの賃金がもらえるのか?

「通常の労働日の賃金」、「平均賃金」、「健康保険の標準報酬日額」のいずれの方法で支払うかが、就業規則によって定められています。勤め先の就業規則を確認しましょう。

CHECK:就業規則の作成義務

就業規則の作成は法律で義務づけられています。
「常時10人以上の労働者を雇用している会社は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出なければいけません」(労働基準法第89条)

CHECK:就業規則の周知義務

就業規則は従業員の誰もがいつでも自由に見れるようにすることが法律で義務づけられています。
「就業規則は常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。」(労働基準法第106条)

①「通常の労働日の賃金」の場合

【有給取得する日の勤務時間×時給】が賃金として支払われます。


②「平均賃金」の場合

【過去3ヶ月の賃金の合計額÷その期間の全勤務日数】が賃金として支払われます。


③「健康保険の標準報酬日額」の場合

【社会保険の標準報酬日額】が賃金として支払われます。


6.いつ有給休暇の申請をすれば良い?

本来は、勤務予定日に休暇を取るのが有給休暇ですが、シフト制の場合、ギリギリの人数でシフトを組むことが多い為、シフトが決まった後に「この日に有給休暇ください」と伝えるのは嫌がられるかもしれません。

会社としてあくまで有給休暇はそういうものだというのであればそれに従えば良いですが、実際のところはシフトが決まる前に伝えることが現実的かと思います。

そうすることで、休むことを前提にしたシフトをはじめから組むことが出来る為、雇い主からすれば手間を省くことができます。




7.有給休暇を使用する上での法律上の留意点

(1)従業員から有給休暇の申請があったら雇い主はそれを拒むことはできない

原則、有給休暇を取得する日は従業員が自由に指定することができます。

また、申請のあった有給休暇を雇い主が断ることはできません


(2)雇い主が有給休暇の取得日を「変更」するように指示することはできる

申請のあった有給休暇を雇い主が「断る」ことはできませんが、有給休暇を別日に「変更」させる権利は有します。

これを、雇い主が持つ「時季変更権」と呼びます。

CHECK:時季変更権が認められる場合

時季変更権の行使は、「事業の正常な運営が妨げられる場合」に認められます。
替わりとなる従業員の確保やシフト変更など、雇い主が最大限に努力したにも関わらずどうしても事業の正常な運営が出来ない場合に認められるもので、単に「業務多忙だから」という理由だけで時季変更権は認められません。


(3)付与された有給休暇は2年経過すると使う権利がなくなる

有給休暇は、使用しなければ永久に残っているというものではありません。

2年経過すると付与された有給休暇は消滅します。

つまり、2年以上前に付与された有給休暇に対して取得する権利を主張することはできません。

CHECK:有給休暇の買取

年次有給休暇の本来の趣旨である「休むこと」を妨げることとなるため、買い取りは法律違反となります。
ただし、退職時に結果的に残ってしまった年次有給休暇に対し、残日数に応じた金銭を給付することは差し支えありません。


8.相談先

以上のように、パートにも有給休暇は付与されます。

■ 年次有給休暇を取得すると不利益な扱いを受けそうで怖い
⇒ 使用者(雇い主)は、労働者(従業員)が年次有給休暇を取得したことを理由として、その労働者に不利益な取扱いをしないようにしなければなりません(労働基準法附則第136条)。不利益な取扱いとは、賃金の減額など、年次有給休暇の取得を抑制するような全ての取扱いが含まれます。

■ 「うちの会社に有休はない」と言われた。
⇒ 年次有給休暇は、要件を満たせば必ず発生します。会社がそのような主張をしたとしても、一定の要件を満たしたすべての労働者に取得する権利があります。

年次有給休暇の取得は、法律によって守られている労働者の権利です。
違法な労働管理は、労働基準監督署によって調査・是正が行われます。

有給休暇を取らせてもらえない等のお悩みがあれば、労働基準監督署に相談してみましょう。

CHECK:相談先

<総合労働相談コーナー>
労働条件の問題のほか、募集・採用、いじめ・嫌がらせなど、労働問題に関するあらゆる分野について、専門の相談員が、面談あるいは電話でお受けしています(ご相談は無料です)。
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html

<労働基準監督署>
賃金、労働時間、安全衛生などについての監督、指導、労働基準関係法にもとづく許可、認可などの事務を行っています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/location.html/
(労働条件相談ほっとライン)
労働基準監督署等が閉庁している平日夜間や休日に、労働条件に関する電話相談を受け付けています。(TEL:0120-811-610)




結果


報告

有給休暇は、条件を満たせばパートにも必ず与えられる法律で定められた権利です。

その為、「うちの会社はパートに有給休暇なんて存在しないよ!」なんて拒否されることがあったとしても、それは完全に法律違反である為、出るとこに出てしまえばこちらの言い分は通ります。

ただ、だからと言って、「法律で決まってんだから有給休暇取らせろよ!」なんていう態度を取ってしまうと、勤め先との関係も悪化し、双方にとって後味の悪い結果になってしまいます。

有給休暇なんて存在しないかのように扱われている場合は、まずはその店舗の責任者にさらっと聞いてみましょう。

店舗の責任者が理解していないようであれば、本社の人事部(労務管理を担当している部署)にさらっと聞いてみましょう。

最悪、経営者すら法律を分かっていない可能性もありますが、勤務先との関係を悪化させないように気を遣いつつ、うまく権利を主張してみてください。

労働基準監督署に相談するというのは、勤め先と真っ向からやり合う気になったときの最終手段となります。

以上
https://www.kirocloak.com/wp-content/uploads/2018/11/yu-kyu_part_img001.jpghttps://www.kirocloak.com/wp-content/uploads/2018/11/yu-kyu_part_img001-150x150.jpgKIROcloak仕事 就職 転職労働法,提言「アルバイト」、「パート」には、有給休暇なんて存在しないと思い込んでませんか? 「フリーターの身で有給休暇なんてあるわけないでしょ!そんなこと考えたこともない!」 ・・・否! 労働法上、パートにも有給休暇は発生しますし、有給休暇を取る権利もあるんです。 知らないことで損をするのはもったいない! 有給休暇の仕組み(法律)を知って武装しましょう(笑) (adsbygoogle = window.adsbygoogle || ).push({}); 4.年次有給休暇の付与日数 (1)有給休暇付与日数早見表 ①フルタイムの場合(パートでもフルタイムと同等の労働をしている場合は含む) ● 週に30時間以上勤務している ● または、1日4時間以上の勤務で週5日または年217日以上勤務している 上記の場合は、パートでもフルタイムと同じ扱いとなり、以下の日数を有給休暇として与えることが義務づけられています。 ②パートの場合 ● 週所定労働日数が4日以下である ● かつ、週所定労働時間が30時間未満である 上記の場合は、所定労働日数に応じて、以下の日数を有給休暇として与えることが義務づけられています。 (2)「所定労働時間」ってなに? ここで疑問が浮かびます。 「シフト制だから週の労働日数なんて不定期なんだけど、どうやって考えればいいの?」 ①雇用契約書や労働条件通知書を確認する 採用時に、「労働契約書」や「労働条件通知書」が交付されているかと思います。 特に、労働条件通知書に至っては、労働基準法第15条に基づき、交付することが義務となっています。(もしもらっていなければ違法) 労働条件通知書に週の所定労働時間(始業・終業時間)の記載があるかを確認しましょう。 ②勤務実績から算出する 所定労働時間が曖昧な場合など、明確に判断できない場合、 直近の勤務実績から所定労働時間を算出します。 例えば、働き始めて半年が経過した時点で有給休暇が付与されますが、その時点(直近半年)の勤務日数が 50日 だった場合、「1年間の所定労働日数」は 50 × 2 = 100日 と言えます。 ⇒「(1)有給休暇取得日数早見表」の②より、3日間の有給休暇が付与されることがわかります。 5.有給休暇を取得時の給料 では、いざ有給休暇を取得したとして、1日あたりいくらの賃金がもらえるのか? 「通常の労働日の賃金」、「平均賃金」、「健康保険の標準報酬日額」のいずれの方法で支払うかが、就業規則によって定められています。勤め先の就業規則を確認しましょう。 CHECK:就業規則の作成義務 就業規則の作成は法律で義務づけられています。 「常時10人以上の労働者を雇用している会社は必ず就業規則を作成し、労働基準監督署長に届け出なければいけません」(労働基準法第89条) CHECK:就業規則の周知義務 就業規則は従業員の誰もがいつでも自由に見れるようにすることが法律で義務づけられています。 「就業規則は常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。」(労働基準法第106条) ①「通常の労働日の賃金」の場合 【有給取得する日の勤務時間×時給】が賃金として支払われます。 ②「平均賃金」の場合 【過去3ヶ月の賃金の合計額÷その期間の全勤務日数】が賃金として支払われます。 ③「健康保険の標準報酬日額」の場合 【社会保険の標準報酬日額】が賃金として支払われます。 6.いつ有給休暇の申請をすれば良い? 本来は、勤務予定日に休暇を取るのが有給休暇ですが、シフト制の場合、ギリギリの人数でシフトを組むことが多い為、シフトが決まった後に「この日に有給休暇ください」と伝えるのは嫌がられるかもしれません。 会社としてあくまで有給休暇はそういうものだというのであればそれに従えば良いですが、実際のところはシフトが決まる前に伝えることが現実的かと思います。 そうすることで、休むことを前提にしたシフトをはじめから組むことが出来る為、雇い主からすれば手間を省くことができます。 (adsbygoogle = window.adsbygoogle || ).push({}); 結果 報告 有給休暇は、条件を満たせばパートにも必ず与えられる法律で定められた権利です。 その為、「うちの会社はパートに有給休暇なんて存在しないよ!」なんて拒否されることがあったとしても、それは完全に法律違反である為、出るとこに出てしまえばこちらの言い分は通ります。 ただ、だからと言って、「法律で決まってんだから有給休暇取らせろよ!」なんていう態度を取ってしまうと、勤め先との関係も悪化し、双方にとって後味の悪い結果になってしまいます。 有給休暇なんて存在しないかのように扱われている場合は、まずはその店舗の責任者にさらっと聞いてみましょう。 店舗の責任者が理解していないようであれば、本社の人事部(労務管理を担当している部署)にさらっと聞いてみましょう。 最悪、経営者すら法律を分かっていない可能性もありますが、勤務先との関係を悪化させないように気を遣いつつ、うまく権利を主張してみてください。 労働基準監督署に相談するというのは、勤め先と真っ向からやり合う気になったときの最終手段となります。 以上日々の選択と結果のご紹介。